2007年12月25日

「折れたひざを伸ばして」

行き着いた先は、ガラス窓からランプの「灯り」と「グレツキ」の調べが漏れてくる、誰も知らない小さな「喫茶店」だった。

「胡桃色」の薄明かりさえをも避けるように、片隅にあるテーブルに身を落ち着かす。
ダークグレイのスーツに、ライトグレイのマフラーを肩からクロスさせ、その上にダークブラウンのハーフコートを身にまとったまま、スツールに腰を落とす。
そして、そのまま、漆黒の木壁に身を預ける。

街は、陽気な「クリスマス」気分に彩られていた。
イルミネーションに飾られた街灯が、行き交う人々の表情に映える。

しかし、その店だけは、違っていた。
『悲歌のシンフォニー』が、重く、そして、低く、響く。聖母マリアへの哀しい祈りが、切々と綴られている。

独り、誘いを断り、「孤独の時」を許した。
久しぶりだった。
「秒刻」から解放され、「時刻」に浸ることができるのは。
「時の鐘の音」に踊らされることもなく。

そう、もう「走る」ことは止めた。
果てしのないレールを過ぎ行きたとしても、その先には、また、別のレールが待っているからだ。

そう、もう神経を「切り刻む」ことは止めた。
「珈琲」の香りに身を包み、「煙草」の匂いに身を委ねることに決めたからだ。

気がつくと、第3楽章の終わりに近づいていた。
反復する和音のメロディは「憩い」を。歌声は「安らぎ」を願う祈りの言葉へと。
あたかも、「慈しみ」と「慰め」が、ランプシェイドの影を包み込むかのように。

折れたひざを伸ばし、「歩き」続けることにした。
決して、急がせることなく。
「時」のままに。
posted by Jhon Done at 00:00| Comment(0) | それだけのことさ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年12月01日

「ニコ」

何だか疲れちまったよ。
いつまで、歌い続ければいいのか、ってな。

ヘイ、ニコ。
俺の代わりに歌ってくれよ。
「シャララララ」と。

ずいぶん、客にこびてきたさ。
歌いたくもねぇ、歌をな。

奴らだって、聴いちゃいないさ。
BGMにもなりゃしねぇ。
「スキャット」したところで、見向きもしねぇよ。

それでいて、毎夜、ステージに立たなきゃならねぇんだからな。

でも、ニコ。
お前だけだよ。
いつでも、リズムとってくれているのは。

「上等」じゃねぇって。
いくら着飾ったって、似合わねぇ奴には、似合わねぇよ。
それで「十分」だ。

さぁ、ステージが始まる時間だ。
ヘイ、ニコ。
客の入りは、どうだい?

金曜の晩にしちゃ、しけこんでいるな。
見ろよ、あのくだけた野郎ども。
フッ、それに、見てくれだけの……。

ま、いいさ。
マスター、いつもの調子で、頼むぜ。
ヘイ、ニコ。
俺が、調子を外したら、よろしくな。
ニコ。
posted by Jhon Done at 00:00| Comment(0) | レインドッグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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