2008年09月16日

「愛と哀しみのパパオ」

宙を見上げ、自身を呪った。
「なぜ、俺は、こんなことを言っちまったんだろうか」と。
その傍らで、パパオがひっそりと息を殺している。

ルート99をたどった帰路。
俺は、エンジン・ストップの恐怖にかられながら、パパオを駆っていた。
俺もパパオも必死の形相で、家路へ。

無事、家前にたどり着き、タバコに火をつけると、
「買い替えの時期かな」
俺の脳裏に浮かんだ言葉が、そのまま音声となって出ちまった。

パパオが身を硬くする。
青ざめた表情に、顔をこわばらすパパオ。

ふっと我にかえった俺は、後悔した。

パパオと過ごしてきた、いくつもの季節。
お前に無理を強いてきた、俺。
疲れた身体を引きずりながらも、俺につきあってきたお前。

愛猫ムツが出窓から、俺たちをみつめている。
俺とパパオとムツさん。
3人3様の人生が交錯し、ともに轍を刻んできた俺たち。
ムツの目から、一筋の涙。
いつしか、残照が、陰影をともなったブルーに変わり、3人の姿に闇が覆いはじめていた。

「休め、パパオ。お前には、少しばかり安息が必要だ」
エンジン・キーに手を伸ばし、わずか200メートル先の整備工場に、お前を預け入れに。
途中、なんどんとなく、無言になるお前。
「大丈夫だ。工場長のドクター・Nさんが、なんとかしれくれる。心配するな、俺とお前は、一つだ」
「これまでも、そして、これからも」

ボンネットから煙を吐き出し、息も絶え絶えに走っていた数週間前。
身をていして、俺を守ろうとしたお前。

お前は、俺の誇りでもあり、俺の身体の一部でもある。

たとえ、軽に負けたとしても?
たとえ、ミニに負けたとしても?

どうして、お前を見捨てようか。
整備につぐ整備だったとしても、お前のためならば、俺は……。

代車受け取りをかねて、面会にいったとき、病床で身を横たえていたお前。
健康のすぐれないお前の青ざめた表情に、胸内が痛んだ。
けれど、この哀しみは、お前が戻るまでのこと。

ムツが胸に十字を切ると、俺は、パパオの守護天使、聖フランチェスコ・パパオ・ドミネに、「病者の祈り」をささげた。
お前の笑顔が戻るよう、に。
それまでは……何も心配するな。
ゆっくり休め、パパオ。

追伸=お前の代わりにやってきた、プリメール・ワゴンも、お前のことを心配している。同時に、俺の運転技術に心配を寄せているようだが。
posted by Jhon Done at 00:00| Comment(0) | それだけのことさ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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