2008年07月01日

「時の欠片」〜言葉を重ねた君〜

君が詩い続ける哀しみのソワール。

『月夜の晩に拾ったボタンは、どうしてそれが、捨てられようか』。
心にしまい込んだ、一つの“ボタン”。

窓枠を包むカーテンの影で、つぶやいた君の一言。
君の傍らで僕は、君の視線の先を追い、小さくなっていく一つの影をみつめていた。

唇を動かすことなく、ささやく君。

夏の終わり。
窓ガラスを通してさしこむ、夕陽の残照。

その日を心待ちにしていた、君。

君の瞳に映る、かすかな面影。
からまった記憶の糸。
はにかんだ表情に、ときおりやどる戸惑いの影。

遠い過去に捨て去った「希望」。
抱きしめ続けてきた「時の連鎖」。
未来に刻み込んだ「夢」。

……けれども?

別れを告げる鐘の音。
闇に包まれる、夕暮れの名残り。
くだかれた、時の欠片。

言葉を重ねた君。
「サヨウナラ」。
闇に消えていく小さな影を、いつまでもみつめていた君。

……いつまでも。

そして、今でも。

心にしまい込んだ、時の欠片。
捨て去ることの出来ない、一つのボタン。
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2008年02月15日

「バレンティヌスの輝き」

聖バレンティヌスの殉教を飾る日を過ぎた、午前一時。

一日遅れのバレンタイン・デイに、とある女性から「花」を貰った。

「花」に疎い俺は、一つひとつの名称をたずねた。

彼女は、花の種類や名の由来を、丁寧に説明してくれた。

花をいたわるかのように、一本一本、両手で包み取りながら説明する彼女の横顔を見つめていた俺は、「美しい人だな」と思った。

彼女は、「憂い」に満ちた人だった。

彼女がたどってきた「道」は、“棘の道”といってもよかった。

普段の彼女からは、決して、そんな素振りはうかがえないが、彼女の瞳の奥には、これまで経てきた「時」のうつろいが秘められていた。

それは、人知れず、多くの涙を流してきた“瞳”の輝きだった。

琥珀色のランプシェイドの下で、「花」は、艶やかな色彩をまとい、優美な香りを放っていた。

しかし、そんな、華麗な「花」達も、彼女の“瞳”の美しさにはおとった。

ローマ帝国の統治下、まだ、キリスト教が公認されてはいない時代。

キリストの「愛」を伝えるために闘った、独りの殉教者。
「聖バレンティヌス」。

「無償の愛」。
“アガペー”を説き続け、散った「バレンティヌス」。

「花」をくれた、彼女の“瞳”の奥には、“バレンティヌス”の輝きが宿っていた。

「美しい瞳」

一日遅れの「聖」なる日。

二人に、永遠の祝福があるように。
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2007年11月15日

「グッド・バイ」

そう、走り続けてきたさ。
立ち止まることも知らずに。

しかし、君には、分からないだろう?

光の中で、闇の中で。
身を削りながら、神経を切り刻みながら。

少しずつ何かが流れ去っていくようで、涸れていきそうだった。
それでも……走り続けてきたさ。

けれども、もう、終わりにしよう。

まるで、枯渇した“泉”の底のようだ。

ひび割れた“底”を覗いてみるといい。

意識の底に澱んでいた“ドロ”をかき乱したかのように。
陰影の奥に潜んでた消しがたい“傷”が再び浮き上がるように。

君には、見えるかい?

分かるまい。
土台、分かるはずがない。
第一、分かろうともしないだろ?

「時を鳴らす鐘」をたたき続けることのみに、気を配る君には。
音色の調子が外れていても、気づかない君には。

一つ教えてあげようか。
「秒刻」の「針」だって、いつかは、その動きを止めるものさ。

だから?
「さよなら」と、君には伝えるよ。

そう、「グッド・バイ」とね。
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2007年10月12日

「ワイピング・クロス」

少しだけ、気分が落ち込んでいる様子ですね。
いつもの“笑み”が、翳っていますよ。

でも、無理に、微笑む必要はありません。
君は、君です。

笑っている時も。
泣いている時も。
どんな時も。

目の前が、少しだけ、“真っ暗”に感じるようでしたら、ちょっと目をつぶってみましょう。

そう。
そして、目を開けてごらん。
暗闇に、目が慣れてきたでしょう。

手にした鏡の中を覗いてごらん。
何が見えます?
光が灯っているのが見えますか。

その灯りは、君です。
悲しい時にこそ、君の「優しさ」の明かりが、灯ります。

「優しい」君だから、時に、ものごとに敏感になってしまうのですね。

けれども、「優しい」ということは、人として、一番、“優れている”ことではないでしょうか。

誤解しないでくださいね。
「優しさ」というのは、着飾った言葉ではありません。
飾った言葉は、いつしか、吹く風に飛ばされてしまいます。

優しさとは、人に思いを寄せる「心」です。
思いやる気持ちです。
そのためには、今以上に、君自身を慈しむようにしてください。
心をつくして、思いをつくして、君自身を、いたわってあげて下さい。

君の心に宿る“灯り”は、心が少しだけ“寒さ”を覚えている人にとって、憩いの“暖”となります。

そろそろ、夜が明けそうですね。
明けない“夜”は、けっしてありません。

昨日は、過ぎました。
今日は、君のためにあります。

今日も、晴れるといいですね。
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2007年09月17日

「ジャングルランド」

ジャンキーが踊る“ジャングルランド”。

“迷路”をさまよい、陽の当たらない場所に身を隠すお前。

3番街と7番街を行き来し、何かを見つけることができたかい?
この“ジャングルランド”で。

全ては、消えていくさ。
同時に?
再び、浮かび上がるがな。

ただし?
ドレスアップだけは忘れるな。
誰に見られているか、分からない。
“パーティ”の日取りだけは、チェックしておいた方がいいぜ。

明日を迎えれば、闇は過ぎ去り、太陽が輝くだろう。
鞄が重ければ、どれか一つ、置いていけばいい。
ただし、裸足では歩くなよ。

この街じゃ、息をつく暇もない。
だからといって、“シャングリア”を探そうなんて考えない方がいいぜ。
いつのまにか、“迷路”どころか、自分自身を失っちまう。

それで、どうする?
強がってもいい。
泣いてもいい。
好きにするがいい。

しかし?
心が石のようじゃ、安らぎはないぜ。

誰かを愛したきゃ、まずは、自分自身を愛するんだな。
自分も愛せないで、どうして他人を愛せる?

それに?
いつまで、鏡にヒビがが入った“コンパクト”を持っているんだい。
それじゃ、綺麗なお前の顔が、歪んじまって見えるだろ?

終日を、冷たい“夜”で迎えたいのかい?

“夢”には、始まりが有り、終わりもある。
新たな“夢”をみるためにな。

必要だったら、ハンカチを貸すぜ。
お前の瞳に浮かんだ“雫”をぬぐい去るためにな。

もう一度、分かる時がくるさ。

どうだい?
気分直しに、いつもの店で。

歩きたいように、歩き。
語りたいように、語り。

そんな、複雑な道でもないぜ。

“ジャングルランド”のあの店で。

待っているぜ、お前が来るまで。
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2007年07月01日

「はさまれたままの『栞』」

あの日まで、君は、心を閉ざしていた。

言葉、言葉、言葉……。
多くの言葉。
いくつもの言葉。
飾られた言葉。
無造作に投げ出された言葉。

その中で、君は、心を閉じていた。
一言でも発すると、失いそうに。
大事なものを。

幾重もの扉に身を隠し、独り、闇の中に。
「光」を請いながらも、身を沈めていた君。
パラドクシカルな物語。

こじ開けたわけでもなかった。
ドアをノックしただけだった。
そう、叩き続けただけだった。
耳を閉ざす君に、語り続けるために。

日々の“生活”に、“澱み”に。
時に、悩みながら。
人々の瞳にうつる「翳り」に息詰まりながらも。
言葉を失いそうになりながら。

それでも、救いは、言葉だった。
言葉に、まだ“力”があると信じていた。

言葉、言葉、言葉……。
「ノブ」に手をかけた君。
『明日は君のために』
言葉、言葉、言葉……。
『明日には、きっと良いことが』

ノブを廻し、扉の隙間から、世界を覗く君。

花開く季節。
君からの「便り」。
編み上げた花の冠。

君は?
扉を開け放った。

俺は?
読みかけの「本」に、「栞」をはさんだ。

そして?
再び、開くことは、無くなった。

短い季節の物語。

今でも、「栞」は、はさまれたままに。
もう、紐解くこともないだろう。
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