2007年12月01日

「ニコ」

何だか疲れちまったよ。
いつまで、歌い続ければいいのか、ってな。

ヘイ、ニコ。
俺の代わりに歌ってくれよ。
「シャララララ」と。

ずいぶん、客にこびてきたさ。
歌いたくもねぇ、歌をな。

奴らだって、聴いちゃいないさ。
BGMにもなりゃしねぇ。
「スキャット」したところで、見向きもしねぇよ。

それでいて、毎夜、ステージに立たなきゃならねぇんだからな。

でも、ニコ。
お前だけだよ。
いつでも、リズムとってくれているのは。

「上等」じゃねぇって。
いくら着飾ったって、似合わねぇ奴には、似合わねぇよ。
それで「十分」だ。

さぁ、ステージが始まる時間だ。
ヘイ、ニコ。
客の入りは、どうだい?

金曜の晩にしちゃ、しけこんでいるな。
見ろよ、あのくだけた野郎ども。
フッ、それに、見てくれだけの……。

ま、いいさ。
マスター、いつもの調子で、頼むぜ。
ヘイ、ニコ。
俺が、調子を外したら、よろしくな。
ニコ。
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2007年06月13日

「“エイダ”と“ベインズ”の物語」

「不安の萌芽」
そうつぶやいた君。

“ナイマン”のピアノ曲。
「……護るため」

“エイダ”と“ベインズ”の物語。

大きな秘密。
哀しい調べ。

「距離を置いた方がいい?」
言葉を得た“エイダ”

「わたしからは、死んでも言いたくない、4つの言葉を言わないで済むために」。
瞳の奥には“哀しみの泉”。

言葉を失った“ベインズ”
泉の底に沈んだままの「ピアノ」。

「自分にどんな犠牲を強いてでも……」。
ピアノの“鍵”を探し続ける“エイダ”

最初は、小さな芽。
やがて、時が、不安の影を。

「護り抜きたい……」
影に消える声。
ささやき消え入るように。

瑠璃色した泉の底に真昼の月が沈む。
“ベインズ”
言葉の奥の深い空洞。

「慈しみ、育んでいく価値のあるものだから……」
イノセント。
“エイダ”
無垢な情熱。

天蓋のように泉を覆う“ベインズ”の眼差し。
哀しげな笑み。

沈黙
「不安の萌芽」。
沈黙。

懐から取り出したピアノの鍵。
“ベインズ”
手のひらから滑り落ちる鍵。

泉へ。
泉の底へ。
底へ。

手を伸ばす“エイダ”
水中に身を投げ込む“エイダ”

泉の底に沈む“エイダ”のピアノ。
真昼の月が、泉の底に潜む。
“エイダ”の影が……瑠璃色に溶け込んでいく。

そして……。
月が落とす影に、身を寄せる君。

闇を包む“ナイマン”のピアノ曲。

“エイダ”と“ベインズ”の物語。
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2007年03月31日

「ウェル・アルルカン」

受話器を降ろした時から分かっていたさ。
“ウェル”

お前の横顔。
膝を折り、両手を広げると、天に「救い」を求める“ポーズ”。
振り向きざま、首を小さく傾げ、両肩を上げるいつもの“ポーズ”。
そして、何でもなかったかのように、笑みをみせるお前。

いつでも、どんな時でも、他人の前では、道化師のように振る舞うお前。
“ウェル”
そのじつ内心は、計りしれない“空虚”に覆われていたお前。

叫びたかったんだろう?
声を荒げたかったんだろう?
心に幾重にも積み重なった「感情」を、吐き出したかったんだろう?

「いらだち」が「憤り」が、心の奥底でからまわりしながらも、表情だにすら表さないでいるお前。
お前の“理性”
抑制された“知性”
そんなものが、重要なのかい?

口を開けた傷口から“血”がほとばしるように、「怒り」をあらわしにたって良かったんだ。
声を限りに、叫んだって良かったんだ。
涙は、苦しみを和らげるために、必要なものなんだ。
“ウェル”

影が寄り添うように、あたりが陰影を深める中、暗がりに身を埋めるお前。
小止み無く降り続ける霧雨が、窓ガラスを叩き続ける。
一点を、じっとみつめたままのお前。
“ウェル”

俺は、お前に「同情」を寄せるつもりはない。
俺は、お前に「憐れみ」をかけるつもりもない。
そんなことを望んではいないことは分かっているからだ。

ただ、いつも何かを求めていたあの時のように、瞳に輝きが戻ることを、祈りたいだけだ。
“ウェル”
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2007年01月31日

「アデュー、“リード”」

奥歯が痛み出した。
相手に気取られまいと、そっと頬をさする。

「大切なことは、『人間的興味』だ」
神経質な黒い目。不信。そして、猜疑心。
1bの距離。
大きな“へだたり”

「ブラザー、君に求めているのは、その視点からのアプローチだ」
「人々の琴線に触れる“ヤツ”をな」
(ブラザー?)
見てくれの良さと尊大さ。
欺瞞。
「そして、もう一つ。『情報』を流せ」
懐柔。
「以上だ。何も聞くな」
(ビッグ・サー。それが、あんたの狙いだろ)

“クオリティ・ペーパー”?
気取ったって、“売文の輩”。
“ヒューマン・インタレスト”
大いに、結構。
クソッタレの“活字芸者”には、飽きていたのさ。
“ご都合主義の道徳的な高邁さ“にな。

“心の琴線”
“人間”をテーマにした記事
“日常的な視点”の記事
なんて「響きの良い言葉だ。
そう、「響き」だけはな。

しかし?
あんたが求めているものと、俺が追いかけるものとでは、違いがあることを知っていた方がいいぜ。

排水溝のような感性を持つ奴らに、何を“売る”?
答えは、“一つ”
死者の墓をあばき、白日に照らし出すことだ。
そう、過去の弔鐘をな。
そして?
汚穢に満ちた「この世界」を、そのまま活字に写し出せばいいのさ。
皮肉なユーモアをまぜてな。
簡単なことさ。

けれども、これだけは言っておくぜ。
「俺は、『ボス』だけは“売らない”」とな。
“ビッグ・サー”、あんたに、“魂”をあんたに預けるほど堕しちゃいない。

それに、“ビッグ・サー”
俺と「良好な関係」とやらを「結び」たいと考えるその前に、「記事」を訴えたらどうなるかってことを“心配”した方がいいぜ、これからは。

もう、“ジョン・リード”は、いない。
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